後部硝子体膜剥離   (このページは大阪市立大学医学部HPの資料をコーピーしたものです)  戻る
硝子体の加齢性変化一後部硝子体剥離、網膜剥離
背景:
硝子体はゴムボールでたとえるなら、空気の入っている部位に相当します(図16)。本来は、透明の寒天状をしており弾力があって、眼球としての形を保つ役割をしています。全くの透明でただの寒天のようですが、眼に見えない程の細い線維が碁盤の目のように縦横に走っています(図16)。この硝子体中の寒天に相当する物質が加齢により液化してくると、碁盤の目のような細い線維の網目がなくなって水だけで満たされた空間ができます(図17)。そうすると、その細い線維が密に集まっているところや疎らなところができ、密なところではその影が眼の底に映ります。眼を動かすと、眼の中の水が動くとともに、密な線維の部位も動き、眼の底の影も動くため、小さい虫やひもが眼の動きとともに動くように見えます。空や白い壁を見た時によく見えます。これは生理的飛蚊症といって心配ありません。さらに、寒天状の硝子体中、水だけからなる空間が次第に大きくなってくると、残った寒天状の硝子体が虚脱して小さくなり、寒天状の硝子体が眼の底のフィルム(網膜)から離れます(図18)。これが後部硝子体剥離です。


 フィルム(網膜)に接する硝子体の表面では、硝子体を構成する細い線維が多く集まって一種の皮(後部硝子体膜)のようなものを作っています。特に眼と脳をつなぐ電線コード(視神経)の出入口ではその皮(後部硝子体膜)がリング状に厚くなっています(矢印図17)。このリング状の皮(後部硝子体膜)が眼の底から離れ、そのリングの影が眼の底のフィルム(網膜)にうつると、暗い影または紐のような影が眼の動きと共に動いてみえるようになります(図18)。また、寒天状の硝子体が眼の底のフィルム(網膜)から離れる時に、眼の底のフィルム(網膜)の血管が傷ついて出血することがある(図19)。眼の寒天状の硝子体中に血が散らばり、出血の影が眼の底に映るため、急に小さい黒いものが眼の前を飛ぶようになります。もしこのようなことがあると眼科を受診しなければなりません。


後部硝子体剥離が起こった時,どうして眼科受診が必要か?
 寒天状の硝子体が眼の底のフィルム(網膜)から離れる、すなわち後部硝子体剥離が起こった時、寒天状の硝子体表面の皮(後部硝子体膜)が眼の底のフィルム(網膜)とどこかで強く癒着していると、癒着した部位に過大な力が加わって眼の底のフィルム(網膜)が引き裂かれることがあります。この時網膜に裂け目(網膜裂孔)ができ、裂けた時に血管も傷つくと、先ほどの後部硝子体剥離と同様、出血を起こして、眼の前に黒いものが沢山飛ぶのが見えるようになります(図20)。
 この時に、寒天状の硝子体中の水が網膜にできた裂け目(網膜裂孔)を通って、眼の底のフィルム(網膜)の下にもぐり込むとフィルム(網膜)が浮き上がってきて、網膜剥離が起こります(図21)。


治療:生理的飛蚊症や後部硝子体剥離は治療する必要がありません。網膜に裂け目(網膜裂孔)ができると、裂け目(網膜裂孔)の周囲にレーザー光線をあてて微小な熱傷(やけど)をつくって瘢痕をつくり、寒天状の硝子体中の水が入り込まないように裂け目をシールします(レーザー光凝固術)(図22)。入院の必要はなく,通院でできます。


 不幸にも,寒天状の硝子体中の水が網膜の裂け目(網膜裂孔)を通って,眼の底のフィルム(網膜)の下にもぐり込み網膜剥離が起こると、早急に入院して手術が必要です。放置すると、治療が困難となり失明に至ります。


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